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最高裁判所第一小法廷 昭和40年(オ)690号 判決 1966年4月14日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人守屋和郎の上告理由第一点について。

原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の確定した事実によれば、被上告人は本件土地を自己の永住する判示規模の居宅の敷地として使用する目的で、そのことを表示して上告人から買い受けたのであるが、本件土地の約八割が東京都市計画街路補助第五四号の境域内に存するというのである。かかる事実関係のもとにおいては、本件土地が東京都市計画事業として施行される道路敷地に該当し、同地上に建物を建築しても、早晩その実施により建物の全部または一部を撤去しなければならない事情があるため、契約の目的を達することができないのであるから、本件土地に瑕疵があるものとした原判決の判断は正当であり、所論違法は存しない。

また、都市計画事業の一環として都市計画街路が公示されたとしても、それが告示の形式でなされ、しかも、右告示が売買成立の一〇数年以前になされたという原審認定の事情をも考慮するときは、被上告人が、本件土地の大部分が都市計画街路として告示された境域内にあることを知らなかつた一事により過失があるとはいえないから、本件土地の瑕疵は民法五七〇条にいう隠れた瑕疵に当るとした原判決の判断は正当である。

所論はすべて採用できない。

同第二点について。

当事者の申し出た証拠を取り調べるか否かは、それが唯一の証拠でない限り、事実審裁判所の裁量に委されるところである。されば、唯一の証拠でないこと記録上明らかである所論証人の取調を原審がしなかつたからといつて、所論違法は存しない。また、上告人が原審において所論検証の申出をしたことは記録上明らかでないから、その不採用の違法を主張して原判決を非難する論旨は、その前提を欠くものであり、論旨はいずれも採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠)

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